私好みの新刊 202006

『見てびっくり 肉食と草食の動物学』 盛口満/文・絵 少年写真新聞社

 動物には、肉食動物、草食動物とそれらを合わせた雑食動物もいる。人間

などは雑食動物だ。それら動物の形態の違いを、主に歯の違い、糞の違い、

腸の違いなど、盛口さん特有のイラストで分かりやすく描かれている。

 最初に「持ちぬしは、だれ?」と問いかけられて、見開きページの周りにた

くさんの動物の頭骨()が描かれている。う〜んと考えながら絵を見ていく

とだいたいの見当はつく。鳥はすぐにわかるが、そうだ、肉食動物には牙が

ある。次ページに肉食動物の説明がある。肉食動物には牙(犬歯)があり奥歯

がとがっていると説明にある。大きなイラストが分かりよい。ネコとイヌの

頭骨の違いも「なるほど」。次にシカやヤギ(草食動物)の頭骨が出る。なる

ほど、今までの肉食動物とは大違いだ。ネズミには前歯があるが実をかじる

ため、モグラ類は肉食獣であることがよくわかる。マンモスの臼歯は草をす

りつぶすためだ。内臓の中身も草食、肉食獣で異なってくる。草食獣の内臓

には盲腸が大きく発達している。消化を良くするためとか。そういえば糞も

草食獣、肉食獣で異なってくる。

 コウモリや鳥の糞、ペリットを調べるといろんな動物の骨片や羽が出てくる。

何を食べたか、すぐにわかる。数々の骨のパズルとなる。鳥には〈干物職人〉

もいる。蛇も干物になるとは。昆虫や植物、魚にも、草食、肉食がある。そ

れぞれの違いがおもしろい。貝にも肉食貝がいる。他の貝がらに穴をあけ中

の肉を食べる貝もいる。

 つまるところ、人間は食物連鎖の頂点に立つ、とある。

ウイルスにはまいるが・・・         2019,11 1,800円

 

 『地球の中に潜っていくと・・・』 入舩徹男/文 関口シュン/

          「たくさんのふしぎ」201912月号 福音館書店

 地球の中に潜っていくと・・、とこんなとてつもない物語が絵本に描かれた。

ということは、だれも見たことのない地球の内部もある程度は科学的な推測が

出来る証拠だ。著者は「高圧地球科学」を専門とする地球物理学者である。

いろんな物質に超高圧をかけていくと、どのように変化していくのか実験的

に確かめている。すると意外な変化が見えてくる。

 地球の中は地殻、マントル、核とおよそ三つに分かれているのは地震波の

解析で分かっている。核はさらに、内核と外核に分けられている。マントル

は数10Km下なので、とうてい人類など潜り込めそうにない。しかし、幸いに

も地球にはプレートがあり、日本海溝などプレートの境目でプレートが地下

に潜りこんでいる場所がある。マントルに対流を起こしていると言われてい

る由縁である。

この本のストーリーは、学者であるおとうさんに誘われて二人の子どもが

地球深部に潜っていくという想定で、漫画チックに物語が展開されている。

ダイヤモンドで出来た乗り物でプレートに沿って地下に潜っていくと・・・

ぱっと黄緑色の地下の世界に突入する。〈マントル〉だ。高圧なので、物

質そのものが光り輝いている。ほとんどは黄緑色のカンラン石の世界だがザ

クロ石も見える。地下に、こんなに美しく光輝く世界が広がっているとは不

思議な現象だ。マグマの出始めも見える。色はやがてオレンジに、圧力が増

すと色も変化する。しばらく楽しんでいるとやがて液体の銀色世界にはまり

込む。〈外核〉到来である。この液体対流のおかげで地球に磁場が起きている。

時には、地球磁場は逆転もする。さらに沈んでいくとゴツンと固体にぶつかる。

〈内核〉である。「地球の中心はすこしずつ冷えている」とか。

大きな絵が描かれているのでわかりやすい。地下の世界をいろいろ想像で

きる。                     2019.12   700

 

            6月新刊